恐怖ダウンロード

「損失を2人で分け合うことができたらいいのにね」


席へ戻ってから夢はそんなことを言い始めた。


でも、もちろんそれはできない。


アプリを使っているのはあくまであたしだから、損失を被るのはあたし1人という形になる。


それを不公平だと感じる気持ちもあるけれど、夢ならいいかと思う気持ちもある。


こうして、一緒に損失についても考えてくれているし、守ろうとしてくれているから。


「損失も少しずつ悪化してるよね」


夢はパンケーキを食べきって言った。


「そうだね」


あたしは頷き、食べかけのパフェを見つめる。


トイレでの出来事のせいで一気に食欲がなくなってしまったのだ。


「今のところ怪我はしてないけど、なにか起こったらすぐにアプリを止めないと」


夢は言う。


それはわかっていたけれど、じゃあどうやってアプリを止めればいいのだろうかという疑問が残る。


「あ、そういえばあのおばあさんに聞いてみるって手があるか」


ふと思いついて口に出した。


このアプリをダウンロードしたおばあさんなら、きっと操作方法も理解しているだろう。


問題はおばあさんに会えるかどうかだった。


「あのおばあさん、何者だったんだろうね」


夢が腕組をして言った時だった。


急に厨房の中が騒がしくなってきて、あたしたちは視線を向けた。


「火事だ!」


「消火器を持ってこい!」


そんな声が聞こえてきて、厨房から黒い煙が流れてきた。


「嘘、火事?」


驚いて席を立ったところで、お店の人が「お客様は店外へ避難してください!」と、叫び始めた。


あたしと夢は弾かれたように外に逃げる。