D組に戻ったとき、美紀と愛子は青ざめて座っていた。


今日1日は大人しくなるとわかっていたけれど、ここまで静かだと逆に気になってしまう。


「あ~あ、今日は平和だねぇ」


夢がわざと大きな声で言う。


「本当だね。いつもあたしをイジメる人たちがやけに大人しいからだよねぇ」


あたしもそれに合わせて反応した。


クラスメートたちはみんなあたしたちから視線を外し、気まずい空気を身にまとっている。


「そう言えば美紀ってあたしたちのことイジメてたっけ? でも仲間が少なくなるとなにもできなくなるんだねぇ?」


夢はわざと美紀を逆なでする言葉を選んでいる。


ニヤニヤとした笑みを浮かべて美紀を見つめている。


こんな子供っぽいやり方ほっておけばいいのに、美紀は悪口を言われるとどうしても反応してしまうタイプみたいだ。


目を吊り上げて席を立ち、こちらへ近づいてきたのだ。


でも相手は美紀1人だ。


愛子が一緒にいところでどうせ戦力外だろうし、怖いことはなかった。


「なに調子乗ったこと言ってんだよ」


イライラとした声色でそう言いながらも、顔色はまだ良くない。


美紀こそ保健室で横になった方がいいんじゃないかと、心配してしまう。