バースデーカード

その視線に一瞬たじろぐ。


『お金のことを気にしていたの?』


『そりゃ……少しは』


俺だってもう子供じゃない。


お金がないと暮らしていけないことくらい、理解している。


けれどお母さんは俺に近づくと『そんなこと気にしなくていいの』と、悲しそうな声で言った。


なんとなくお母さんの顔を見ていられなくて、目をそらせてしまう。


『まさか、そのために本を……?』


『そ、それは違うから!』


慌てて左右に首を振ると、お母さんはホッとしたように肩を落とした。


俺が本を出そうと思ったのは、素直に嬉しかったからだ。


俺でもこんなことができるんだと、みんなに教えたかったからだ。


お金がもらえることもわかっていたけれど、それは二の次。


その気持ちに嘘はなかった。


お母さんとそんなやりとりがあった数日後、俺が書いた日記は全国ロードショーで上映されていた。


映画のタイトルは《旬》。


著書と同じタイトルだ。


映画の評判も上々で、俺の日記は更に読者が増えていた。