バースデーカード

これは俺がここで生きていた証しになる。


俺が死んでも、この本は残り続けるから。


そう考えて、ハッと息を飲んだ。


いつからか俺は自分の死を身近に感じていたのだと気がついた。


新たな発見とともに出版された本は瞬く間に売れていった。


さすが敏腕編集者の大池さんというか、出版社の売り込みのすごさを感じられた。


俺みたいな無名な病人の日記がこんなに売れて、朝のニュース番組や新聞でも取り上げられ、更に売上を伸ばして行った。


そうして売れに売れた本は半年ほどで50万部を突破し、有名俳優を使った映画になることも決定した。


社会現象とまで呼ばれるようになり、自分の書いた日記なのにまるで他人の文章のように見えてきた。


『少しは恩返しできたかな』


検査を終えたある日、病室に戻った俺は付き添いにお母さんへ向けていった。


『え?』


『ずっと入院とか手術ばかりで、かなり金かかってるだろ? でも今回の本の印税で、少しは恩返しできたかなって』


何気なく感じて話しただけのことだった。


深い意味はない。


しかし、リンゴをむいていたお母さんは手を止めて鋭い視線を俺に向けた。