バースデーカード

普通は郵送で送られてくる見本誌を、大池さんはわざわざ自分の足で届けてくれた。


『これが、旬さんの記念すべきデビュー作です』


そう言われて手渡された紙袋を除くと、10冊の見本誌が入っていた。


その一冊を手に取り、袋から取り出す。


ハードカバーを呼ばれる大判の本はずっしりと重たい。


エメラルドグリーンの表紙の背景はラメが入ってキラキラと輝く。


その上に俺の写真が印刷されていた。


7月3日、病院で新と一緒に取った写真だ。


新も一緒に表紙になればいいと言ったのだけれど、新は恥ずかしがってそれを辞退した。


だから表紙に映っているのは俺1人。


手に取った瞬間香るインクの匂い。


俺の日記を印刷するためにだけ使われたもの。


そう思うと胸がいっぱいになった。


作業中にはまだ半信半疑だったデビューというものが、とたんにリアルになる。


『すごい……』


最初に出た言葉はあまりにも短いものだった。


でも、本心だった。


自分の日記が本になった。


まだ誰も手に取っていない本。


これからこの本は全国の本屋に並ぶんだ。


ゾクゾクとした興奮が体の内側から這い上がってくるのを感じる。