バースデーカード

大池が病室を出ていったあとも、俺はぼんやりとした気分だった。


今の出来事が自分のことなのだと理解するまでに時間が必要だ。


『俺、本当に本を出すんだな』


呟くと、お母さんが指先で目元をぬぐって頷いた。


いつの間にか泣いていたみたいだ。


『なんで泣くんだよ。嬉しいことだろ』


『えぇ。嬉しくて泣いてるの』


『大袈裟だなぁ』


言いながらも、本当は俺もすごくうれしかった。


こんな俺でもなにかができるんだということが、たまらなくうれしい。


それから出版作業は始まった。


できるだけ日記をそのまま本にしたいということで、あまり修正箇所はない。


明かな誤字脱字を直したり、追加で記載したいものを書いたりする程度だ。


病室に広げたパソコン相手の作業中は、いつも以上に没頭するようになった。


集中して作業をするからあっという間に時間が過ぎていく。


20分なんてあっという間で、疲れて横にならないといけないのがすごく悔しかった。


もっと作業をしていたい。


そんな気持ちが強くなっていた。


そして、そこから半年が過ぎて新は中学3年生になった。


そして、本はようやく形になった。