告白を最初に断ったとき、彼に興味がなくて付き合ったことのない人じゃないとダメだと言ってしまった。

事実、小説に影響されて付き合うならそういう人がいいと思っていたのも本心だ。だけど、そこばかり拘っていたら春日井くんはいつか離れていく。


……違う。いつかじゃなくて、約束のお試しの1ヶ月が終われば離れていくはずだ。



「つ、付き合ったことのないようなウブ男子は好きです」

「……うん」

「でも、その」


春日井くんが離れていくのも、嫌だなんてわがままだ。私はこの人のことが好きなのかな。

今まで恋とは無縁で、中学まではお稽古ばかりさせられてつまらなかった。
自分の退屈な日常が嫌でしかたなくて息が詰まって、高校は反発して親が望んだところは行かずに今の高校へ入った。


そんな中、まほこちゃんに教えてもらった初々シリーズは私にとって初めての娯楽で、夢中になったものだった。


そこから小説や漫画の楽しさを知っていったところで、



〝御上さん、なんの本読んでるの?〟

春日井くんに放課後の教室で声をかけられたのだ。