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「早かったね」
本当に驚いた様子で春日井くんが読んでいた雑誌を机に置く。そして手招きをしてくる。
どうやらベッドの横に座ってということらしい。男の子の部屋に興奮と緊張をしている私は、ぎこちない動きで春日井くんの隣に座る。
「言われた通りに、部屋にきてベッドに座っちゃうなんて、御上さんは素直すぎるね」
「……私、たとえウブ男子に照れながら誘われてもホイホイここまでこないよ」
「じゃあ、なんで今ここにきたの?」
春日井くんが困ったように眉を下げて笑う。
きっと彼は私がまた変なことを考えているのだと思っているのだろう。
「春日井くんだからきたの」
「……それ、どういう意味?」
目を細めてこちらの様子をうかがうような春日井くんに、私は包み隠さずに素直に告げることにした。恥じらいは一旦端っこにずれてもらう。
「正直に話すと、春日井くんとなんだかすごく会いたくなっちゃってきました」
「げほっ」
いきなり咳き込みはじめた春日井くんの背中を慌ててさする。
水を持ってきたほうがいいだろうかと立ち上がろうとすると、腕を掴まれて引きとめられた。



