「綺梨、好きなんだね」
「え?」
「兄貴のこと」
ぽかんと口を大きく開けてしまう。
私が、春日井くんを、好き?
付き合ってはいるので春日井くんのことが嫌というわけではない。だけど自分のこの感情が恋愛なのか、まだよく掴めずにいる。
「付き合う前にキスしたって男、兄貴なんでしょ。だから綺梨が流されたんじゃないかって心配で」
「……どっちかっていうと最終的に私が強引に付き合ったような気がする」
「私はふたりが幸せならいいよ」
薄暗い部屋の中で、柔らかく笑ったまほこちゃんの表情が春日井くんと似ていた。
私と春日井くんの幸せって、なんだろう。同じものなのか、それとも別のものなのか。難しくて答えがでない。
すると、まほこちゃんは本当に疲れていたらしく寝息を立てはじめた。
ふと、スマホの明かりがつく。
人工的な眩しさに目を眇めながら、手繰り寄せる。
新着メッセージのお知らせだった。
……本当に連絡きた。
先ほどキッチンで囁かれた夜の約束の合図。
『まほが寝たら、俺の部屋来て』
スマホを枕元に置いて、私はそっとまほこちゃんの部屋を出た。



