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私はリビングの床に正座で座り、胡座を掻いて不機嫌そうなまほこちゃんと向かい合う。すぐ近くには春日井くんが座っている。
「で、なんで綺梨が兄貴の部屋にいたの?」
どうやらまほこちゃんは、お兄さんが自分の友達に手を出そうとしていると思っているみたいだ。これはいけない。ちゃんと誤解を解かないと。
「まほこちゃん! 私には彼氏がいます!」
「だから、兄貴の部屋行っちゃダメでしょ」
もっともな意見に頷く。その通りだ。
「まほ、俺にも彼女がいるから」
「知ってるよ。てか、彼女いるのに綺梨に手を出そうとしたの?」
「うん、いいんだよ」
……春日井くん、この状況でのその発言はとてもクズが溢れている。まほこちゃんが白目剥いている! 兄妹仲の亀裂がこのままでは更に深くなってしまう。
認めてもらうためにも、私がしっかりしないといけない。
「まほこちゃん、紹介するね。こちらが私の彼氏です!」
バスガイドのようなポーズで右手の平を春日井くんへ向ける。



