教えて、春日井くん




「なんでここにいるの?」

「うん、俺が聞きたいけど……まあでもなんとなく察した」

ニコニコしていて何故か機嫌が良さそうな春日井くんは、部屋から出ようとする私の手をつかんでドアに押しつける。


「どうして逃げるの?」

「ちょっと状況が把握しきれていなくて?」

ここはまほこちゃんの家なのに、何故か春日井くんがいる。


「まほこちゃんの彼氏……」

「なわけないよね」

「ですよね」

まじまじと見つめてみると、春日井くんとまほこちゃんは目元が少し似ているかもしれない。



「お兄さん……?」

「あ、そっちの趣味はなかったけど、今のちょっといいね」

春日井くんがまほこちゃんのお兄さんだったことに驚愕しつつも、しっかりと部屋の中をぐるりぐるりと眼球をフル回転させて見回しておく。


こ、これが本物の男の子の部屋! 綺麗に整頓されていて、でも少しだけベッドが乱れている。生唾を飲み込んだ。今の私、変態っぽい。



「こ、ここで春日井くんは寝起きしてるんだね」

「……御上さん、変態心仕舞って」

「う……っ、内なる変態が暴れている」

「御上さんは一体なにを患ってるの……」

はあっとため息が頭上から漏れる。なんだか私服の春日井くんは大人っぽい。

服装は黒いパーカーでラフなのに、春日井くんが着るとお洒落に見えるのは髪の毛が脱色しているからだろうか。




「あれ、綺梨ー?」

廊下から声が聞こえる。戻るのが遅い私をまほこちゃんが探しているのだろう。




「戻らないと」

ドアノブに伸ばそうとした私の手を春日井くんが引き止める。



「待って、あと数分だけ」