「あれ? 父さんの知り合いの人? いやでもさすがにないか……」
どこかで聞いたことがあるような声がして、おそるおそる振り返ってみた。
「は」
「え」
「……ん? え?」
綺麗な顔立ちをした男の子が、眠たいわけでもなさそうなのに目をゴシゴシしてる。ちょっとかわいい。
「俺の彼女がいる」
「私の彼氏がいる」
私も真似して、目をゴシゴシしてみる。視界は良好だった。
「あんまり擦ると目が腫れちゃうよ」
「あ、うん」
春日井くんは自然に私の手を取って、右側ではなく左側へと連れていく。よくわからないまま、部屋の中に私は吸い込まれていった。
あれ?



