「も……むり」

春日井くんの手をぎゅっと握ると、少々名残惜しそうに離れていく。

息を整えながら俯くと、髪が耳にかけられた。
なんだろうと顔を上げようとした時だった。影が落ちて、耳元に吐息が吹きかかる。

そして、先ほどまで私の口内にいた彼の舌が今度は耳を這うようにして迫ってくる。


「待って……っ」

「俺のファーストキス、聞いたんだから。これは対価でしょ」

そういえば、自分で教えてもらう代わりにキスをしてもいいと言ったんだった。

それに……どうしよう。
想像以上に興奮してる。私ってやっぱり変態らしいと再認識してしまう。


耳の中に春日井くんの舌が入り込み、音がこもって聞こえてくる。
甘ったるい声が自分の唇の隙間から漏れて、縋るように春日井くんの手を握りしめた。


キスはいいって言ったけど、耳まで虐められるなんて聞いてない。
でも突き放せないのは、多分〝もっと〟って自分の中で求めてしまっているからだ。


ようやく春日井くんが私から離れると、彼はしれっとした顔で目を細める。



「どうだった?」

弄ばれたような気がして、ちょっと悔しくなる。

だけど——