「……本気」

「そうだよ。振り向いてほしくて、必死なくらい本気」

私の生態を知って、ここまで熱心になってくれる春日井くんは相当変わり者だ。


「毎日好きになって、ちょっと困ってる」


やばいです。今、猛烈に私の脳内がいかがわしいバグが起こっています。

脳内のあらすじを話すと、子犬のように弱って見えた春日井くんの過去を知り、ちょっと変な人に騙されてるんじゃないかなって心配になりつつ、私に対して本気だと宣言。そして、毎日好きになるとほんのり赤い顔で言われて、心臓がばくばくしてる。



少女漫画で女の子のキスを奪う男の子の気持ちがわかってしまった。

痴女でもいい。春日井くんのキスを奪いたい。

だけどそんなこと彼ならもう飽きるくらい経験済みだろう。そうだ、ファーストキスのときだって奪われたって言っていた。



「ねえ……春日井くん」

「ん?」

「ファーストキスは、頭に手を回されて奪われたんだっけ」

「え? そうだったと思うけど」

過去の男に嫉妬するヒーローの気持ちもわかってしまった。
俺で上書きしてやるよ的なアレ。


私は右手で春日井くんの顎を掴み、くいっとこちら側に傾ける。

そして、左手で後頭部を掴んで唇を奪った。