「春日井くん、失った初めてはかえってこないんだよね」

「そうだね、かえってきたら困るね」

「私、タイムリープできたら春日井くんの初めてを奪いにいくよ」

「え、そんなことにタイムリープ使わないで」

すごく真剣に嫌がられてしまった。SFを穢すなと言われた気がする。ちょっと反省した。



「そんなに俺の初めてがほしいの?」

「え……そうなのかな」

自分でも驚きだけど、初めての男子よりも、春日井くんの初めてに最近食いついている気がする。

だけど、もしも中学の頃に出会っていてもあの頃の私はウブ男子に興味がなかった。

私が興味を持ったのは、まほこちゃんが教えてくれた本のおかげで高校一年からだ。



「俺の初めて、なになら残ってるかな」

春日井くんの初めて探しが始まったけれど、あまり思いつかないようで眉を寄せている。経験豊富な春日井くんが見つけるのは難しそう。


すると、「あ」と声を出して、にっこりと微笑まれた。これは何かを企んでいる顔だ。



「俺の家、くる?」

春日井くんの家というワードに驚きつつも、ふと疑問が生まれる。


「女の子を家にあげたことないの?」

「ないよ。誰とも本気で付き合ってなかったし」

さらりとクズなことを言ったけれど、春日井くんは相手もわかってて俺と関係持っていたからと平然としている。

心にウブを住まわせているので、時々忘れてしまうけれど春日井くんはそういう人だった。



「あ、そうだ。初めてあった」


春日井くんの手が私の頬に触れて、髪の毛を耳にかけてくる。

私に触れるとき、春日井くんはすごく丁寧で慎重。指の先から大事にされているのが伝わってきて、どぎまぎしてしまう。





「御上さんと本気で付き合ってる」