「え、ダメなの? 似合ってるって言ってくれてたのに?」

周囲に褒められていて、春日井くんも似合っていると言ってくれているのに、どうしてしてはいけない方向になるのかがわからない。


「他の男にうなじなんて晒さないでよ」

「? うなじの魅力が私にはさっぱりわからないんだよね」

男の人は女の人のうなじが好きだと聞いたことがあるけれど、私にはその良さを感じない。うなじってそんなに魅力的なものなのだろうか。


「ふーん、なら〝できないように〟しないと」

なにやら不機嫌そうだ。春日井くんが胡散臭い笑みを浮かべているときは、ちょっと呆れた場合か怒っている場合が多い。


「どういうこと?」

「しるし付けとくってこと」

春日井くんの顔が、私の首に近づく。


「っ!? ぃっ……なに……っ」

柔らかな髪が私の頬にあたり、首に唇が触れたかと思えば歯を立てて噛まれる。

そして、その後再びキスをされて、チクリと痛みが走る。



「か、春日井くん……っ、ひっ」

すると今度はぬるりと舌先でなぶるように触れてきた。耐えきれずに悶えていると、両手首を掴まれて押さえ込まれる。



「はぁ……食っちゃいたい」

「くっ!?」

物騒な言葉が聞こえてきて、目を見開く。


「今は、俺のだってわからせないとね」

そう言って先ほどと同じ痛みが何度も首筋に感じて、その度に私はびくりと体を震わせた。

吸血鬼のような春日井くんの行動の正体を知ったのは、それから少しして手鏡を見るように言われてからだった。



そこには赤い痕がいくつも残っている。

所謂キスマークというものらしく、髪の毛で隠さなければいけなくなり、私はしばらくポニーテールができなくなってしまったのだった。



「こ、こんなんじゃ髪の毛結べない……!」


不満を漏らす私に春日井くんは不敵に笑う。



「男なんて、独占欲の塊だから」


私の首には、彼の熱が残っているように感じた。