ひーちゃんは怒っているというより、いまだに信じられないといった様子で「本当なの?」と聞いてくる。

どう説明するべきかと答えに困っていると、亜未ちゃんが「春日井は遊び人だから傷つけられるよ!」と感情を昂らせながら言ってきた。


「遊び人なのは知ってるよ」

「ならなんで!?」

「春日井くんにもかわいいところがあるんだよ」

案外すぐ赤くなるし、狼狽える。そういうところを見ていると、時々遊び人だということを忘れてしまう。


「う、嘘でしょ……!」

「え? 本当だよ?」

「なんで綺梨、そんな嬉しそうな顔してるの!」

……春日井くんの心のウブのことを考えていたせいかもしれない。顔が緩みすぎないように、気をつけないと。


憤慨する亜未ちゃんに対し、ひーちゃんは「まあまあ」と宥める。



「綺梨は相手の評判を知ってて付き合ったんだし、今は見守ろうよ」

「でもっ、春日井なんて絶対手が早いよ! 変態だよ!」

あ……絶対変態なのは私の方。手を出してほしいと強請っているのも私だ……。

どうしようもしかしてこれ話したら痴女だってどん引きされる?



「あ、あのね、春日井くんはああ見えて純情なんだよ!」

むしろ私が不純です。ごめんなさい。


「か、春日井が純情!?」

今度は亜未ちゃんよりもひーちゃんの方が驚いている。


「すぐ照れるし、かわいいよ」

「……なんか思ってた感じと違う?」

興奮が収まったらしい亜未ちゃんがこてんと首を傾げた。たぶんみんなが想像しているような関係とは違っている。


「春日井が迫って、無理やり付き合わされているって噂を聞いたんだけど」

確かに最初は告白されて、キスも向こうからだった。

だけど今はこっちから色々と強請り、時折逃げ出そうとする春日井くんを必死に掴んでいるような感じなのだ。



「無理やりなんかじゃないから、安心して?」

「……綺梨、貞操だけは守るんだよ」

亜未ちゃんの言葉にただ笑みを返す。


……約束はできない。