「俺は誰でもいいわけじゃないの。御上さんとがいいの」

「? うん、私もだよ」

誰でもいいわけではない。
春日井くんが心にウブを飼っているからこそ、私はもっと触れてみたいのだ。でもこれを言うと叱られそう。


「……そういえばキスしてほしいんだっけ」

「! うん」

付き合う前にキスをしたっきり、二度目はしていない。是非初々シリーズの再現をしてほしい。


「……どんなキスしてほしいの?」

「! 私のことを見つめながら、ゆっくりと口の端にキスしてほしい!」

「口の端?」

「好きな話の中のひとつなんだけど、緊張しすぎて失敗しちゃうんだ」

そこもウブ男子らしくて胸キュンポイントだった。



「へえ、わかった」

「ありがとう!」

「——でも、俺初めてじゃないから再現の〝失敗〟しちゃったらごめんね?」


その意味を私はわからないまま了承する。
すると春日井くんは一気に上機嫌になったのだった。

まあとにかく春日井くんの機嫌が良くなったのでよかったと胸を撫で下ろした。





手練れ、春日井一樹による思惑を、私は月曜日に知ることになるのだった。