「え、すごい音したけど大丈夫?」

「だ、だだ、大丈夫! 春日井くんが急にウブ男子みたいなこと言うから……!」

「ごめん、すんごく意味わからないし、俺の純粋な気持ち返して」

なんだか怒られているような気がする。春日井くんは心のウブを認めたくないのかもしれない。


「御上さんの変態」

「変態が好きな春日井くんもそこそこ変態だよ」

「意味不明。絶対御上さんのところで時空がねじ曲がってる」

ファンタジーなことを言われても私は対応に困る。

とりあえず宥めるために、「うんうん、そうだね。ねじ曲がってる」と肯定してみると、ますます叱られた。そういうことじゃないらしい。

恋人同士は片方が怒ると折れてあげた方が上手くいくって記事を読んだのに嘘ばっかりだ。



「……御上さんは俺じゃなくて、女の子慣れしていない男の方がいい?」

電話だからか、普段とは少し違う低めの声で聞かれた。

自分が女の子と付き合うのが初めてではないことを気にしているのかもしれない。



「初めての男子にも興味があるけど、今は春日井くんの心のウブに興味があるよ」

「……喜んでいいのかわからない」

「私、春日井くんに興味があるの」

女の子と遊んでいた彼が、私の前で見せるウブな仕草はかなりツボなのだ。できればもっと見ていたいくらい。



「俺絶対、御上さんに弄ばれてる」

今、春日井くんはどんな顔で話しているのだろう。もう一度照れ顔が見たい。