ブックカバーを外して、学生服姿の男女が描かれている表紙を彼に見せつける。


「これは初めて女の子と付き合う男子の初々しい恋愛小説。つまり、そういう初体験の話」


口をぽかんと開けて硬直している春日井くんには刺激が強かったらしい。

いや、そもそも遊び歩いている男がこの程度で刺激が強いなんてことがあるのか。



「そういう男子が好きなの?」

「好物です」

へぇ、そういう男子が好きなんだと呟いた春日井くんが口角を上げた。


「でも俺もそういう時期あったよ?」

「? それは確かに?」


確かに春日井くんにも初めてだったときがある。

私は遊び人の春日井一樹しか知らないので、それを思うと好奇心がむくむくと湧き上がってくる。聞きたい。春日井一樹の初めての話が聞きたい。



「春日井一樹くん」

「はい」

「初めて付き合ったのは、いつですか」

「んー……付き合う? どうだったかな、色々経験したのは中二の春かな」


ち、中学二年!?
私だって中学の頃に、周囲の片思いの話とか告白して付き合えたという話は聞いたことがある。

だけど春日井くんの言う〝色々経験〟はそれを明らかに超えている。
甘酸っぱさの最高潮期にどのようなアバンチュールがあれば、そういうことに繋がるの!?


ごくりと息を飲んで、顔を近づける。