再び隣同士で歩き出すと、ジャージ姿の一人の男子生徒が走ってこちらにやってくる。


「春日井じゃん。……と、御上さん?」

「おー、なにしてんの?」

「教室に忘れもんしちゃってさ」

話はよく知らない男子だけど、春日井くんは知り合いらしい。

ぼーっとふたりのやりとりを聞いていると、男子は私のことをチラッと見て気まずそうな表情をする。



「あのさ……なんで、春日井が御上さんと?」

ここはなんて答えるべきだろう。

ちょっと偶然一緒になっただけ? それとも一緒に帰るから? 付き合っていると言うべき?


「仲よかったっけ?」

春日井くんを見上げると視線が交わる。
彼もなんて答えるべきか迷っているのかもしれない。


ここは私が、はっきりと答えるべき?
お試しで1ヶ月とはいえ、春日井くんと付き合っているため、いっそのこと声高らかに宣言をしてしまおうか。


すると、視線が外される。




「彼女」

指先を手繰り寄せるように掴まれて、そのままぎゅっと握られる。

その手の温度は、少しだけ熱かった。