「——っ」
声を必死に飲み込むように唇を噛んでいる春日井くんの姿にうっとりとしていく。
私、新しい扉を開けてしまったかもしれない。
「き、りちゃ……っ」
甘噛みをすると顔を逸らそうとするので、追いかけるように舌を耳の中に入れる。
「っ、それ、だめ」
身をよじりながら、だめだと訴えてくるけれど本気で嫌がっているわけではないのはわかっている。だって手は縛られていないのだから、抵抗しようと思えばできるのだ。
「ん……っ」
くぐもった声を出している春日井くんを見ていると、もっと虐めたくなってくる。
だって私以外、彼のこんな姿を知らないはず。
学校の生徒たちの認識では、春日井くんは遊び人だったり、モテる先輩。恋愛に慣れていそうで、余裕な雰囲気を醸し出している彼からは想像がつかない姿だ。
必死に堪えている春日井くんに追い討ちをかけるように、なぞるように舐めてみる。
「ぅ、あ……ちょ、たんま!」
ついに手が伸びてきて、私を止めてくる。
いいところだったのに。
目隠ししていたネクタイをとった春日井くんは、赤い顔で不満げに上目遣いで見てきた。
「ここ学校だからね、綺梨ちゃん!」



