「最近はあまり会えないけど、同じ大学に入れたらたくさん一緒に過ごそう」

春日井くんが私の手を持ち上げると、甲にそっとキスをする。
柔らかで、でも少しだけ冷たくって、泣きそうになるくらい優しい。


浮き上がる白い息が、儚げに溶けていった。



「だから、俺のこと捨てないでね」
「……捨てないよ。春日井くんも心の童貞を捨てないで」
「それは捨てたい」

それだけは私が捨てさせないと目を輝かせる。

そしてもうひとつお願いをしてみることにした。



「キスしてほしい」
「……うん」
「濃いやつ」
「え、それは外だから、ね?」
「とにかく濃いやつ!」

頬を赤くして顔が強張った春日井くんから、手を振り解いて両手で頬を掴む。


「ちょ、ちょっ、綺梨ちゃんっ!」
「少しでいいから! ちょっと入れるだけ!」
「っ、言い方! てか外ではダメだって!」
「けちー!」

私の手を顔から離したかと思えば、片手で目隠しをされる。




「これで我慢して」

軽く、触れるだけ。

だけどそれは、お互いの想いが伝わるような優しいキスだった。