「春日井くんの匂いだ」
「え、それくさくない? 大丈夫?」
「最&高」
「……それはそれで……うん」

春日井くんの普段つけている香水はオレンジの爽やかな匂いがして、胸がぎゅっと収縮する。寂しさが少し埋められていく。この香りが好きだ。

私のマフラーに顔を埋めた春日井くんも同じように呟く。


「本当だ。綺梨ちゃんの匂い」
「私の匂い、どんな感じ?」
「……どんなって、いい匂いするけど」

ぐっと顔を寄せてみる。詳しく聞きたい。



「えろい気分になる?」
「っ、なに言ってんの?」
「抱きしめてるときみたいな気分になるかな〜って」

相手の匂いを感じるときって、抱きしめられたときの印象が強い。
そのため私はマフラーの匂いをかいだとき、抱きしめられた記憶が蘇った。


「……そんなこと考え付かなかったけど、そう言われると意識しちゃうんだけど」
「私はこのマフラーの匂いをかいで、春日井くんの照れ顔たくさん思い出すね?」
「っ、思い出さないで!」

私を抱きしめて照れていた春日井くんを思い返すために再びマフラーに顔を埋める。……毎日かごう。

そんな幸せに満ちた気持ちでいると、ふとあることを思い出してしまった。