その後の話 (高校三年の冬)





高校三年の12月。私たちは付き合い始めてから二度目の冬を迎えた。

お互いに忙しくて最近ではあまりふたりの時間が作れていない。
そのため、今日は久々に一緒に過ごす放課後だった。


「春日井くん、こうしてふたりで過ごすの久々だよね?」
「うん、お互い忙しいからね」

寒空の下、ふたりで学校近くのベンチに座って、温かいお茶を飲みながらお喋りをする。

春日井くんの口から、白い吐息が漏れるえろい光景をじぃっと見つめながら、真剣に問う。


「こうして健全にベンチに座って過ごすだけでいいの?」
「……綺梨ちゃん、目がギラギラしてる」

ギラギラ? それはギラギラもしたくなる。
私は最近春日井くんのウブな姿をチラッとすら見れていないのだ。


お願い、春日井くん! 心に秘めているウブを見せて!


「春日井くんは男として、溜まらないの?」
「えーっと」
「私は溜まってる!」
「女の子がそういうこと言うのやめようね?」

それならどう表現するべきか、少し悩んでからきちんと説明をする。周りくど言い方ではなく、この際はっきりと言おう。


「違うの、私はね……性的行為がしたいわけじゃないの!」
「あの、綺梨ちゃん、その、声が大きいよ?」
「春日井くんが不足しているの。このままだと私、春日井くん不足でおかしくなっちゃうよ」

必死に訴えかける私に、春日井くんが一瞬嬉しそうに頬を緩める。


「……綺梨ちゃん」
「ウブな姿をもっと見せて?」
「数秒前の俺の嬉しさを返して」

あれ。春日井くんの表情が消えていく。
他にどんな伝え方をすればよかったのだろう。難しい。

それに春日井くんは男の子なのに、会えなくてもへっちゃらそうなのが納得いかない。世の中の高校生男子はもっと、こう……もっと肉食なのでは?