「なにしてんのっ!?」
「ちょっと」
「い、いやいや、なにがちょっと!?」

そのまま顔を寄せて、胸元にキスをする。

春日井くんが普段つけている香水の匂いがした。オレンジのような爽やかな匂いが、すっかり私は好きになっている。

「き、綺梨ちゃん……あの、」
「春日井くん、キスマークのつけかた教えて?」
「え」
「吸えばいいの?」
「あ、え……えっ?」

戸惑いすぎて会話にならなかった。とりあえず本で得た知識通りに吸ってみる。

「……っ」

気の抜けた変な音が出て、これでいいのか?と疑問に思いながらも口を離す。


「あ、なんか上手くできなかったかも」
「うん……あの、うん。あー……」

両手で顔を覆いながら、指の隙間から春日井くんが私を見てくる。


「綺梨ちゃんがこんなことすると思わなくて、だいぶやばい」
「嫌だった?」
「……嫌じゃないけど…………もっとつけて」
「春日井くん、それはさすがに変態発言だと思う」
「あー……うあー……忘れて」


口角をぐっとつり上げて、春日井くんの手を掴む。

引き剥がすと、真っ赤な春日井くんの顔が露わになった。


「私がつけるところ、ちゃんと見ててね?」
「……っ」

ぐっと春日井くんの手が動きそうになるのを、笑顔を浮かべながら渾身の力で阻止する。


それから何度か失敗を繰り返しつつも、私は春日井くんの肌に痕をつけた。


そして私がつけてしまった痕を理由に海とプールは禁止になった。(でも多分水着を見せたくないだけ)と思ったけど、心に留めておくことにした。