翌日の放課後、普段あまりこの時間帯に街を出歩かない私には刺激的なことの連続だった。


「か、春日井くん!」

「うん、落ち着いてね」

「かかかっ!」

街には制服カップルがたくさんいる!

腕を組んで歩いているラブラブカップルや、少々ぎこちなく手を繋いでいるカップル。そしてまだ付き合っていなさそうだけど、両片思いっぽい人たち。

この人たちにどんなドラマがあるのかと想像するだけて楽しくなってくる。

「すごいね! 放課後ってこんな感じなんだね!」

「綺梨ちゃん。はぐれちゃいそうだから、手繋ごうね」

春日井くんの大きな手が、私の指先をそっと掬うようにとる。

控えめで、私の気持ちをうかがうような仕草に心が撃ち抜かれた。強引過ぎないところがまた春日井くんのかわいいところだ。


私は指先を動かして、春日井くんの手を自分の方へと寄せながら握りしめる。
一瞬、春日井くんの手がぴくりとして、すぐに握りかえしてくれた。


「春日井くん、照れてる?」

「照れてない」

素っ気なく返されたので、春日井くんの顔を覗き込んでみる。


「ほう……頬赤いのに」

「……綺梨ちゃんって付き合ってからの方が余裕そう」

「ええ、そうかなぁ」


それは春日井くんが可愛すぎるからかもしれない。

初めてのことへのドキドキよりも、春日井くんの照れたりする表情を見ているときのドキドキの方が勝る。


「手だって握ってもいつもと変わらないし」

「ドキドキしてるよ。だけど、それ以上に春日井くんの繋ぎ方にときめいて幸せを噛みしめてたの」

「……それ俺、喜んでいい……のかな?」

喜んでと笑ってみると、春日井くんが照れくさそうに口元を緩めた。

……かわいい。春日井くんの仕草一つひとつが私のツボになっている。