「タイムスリップしてぜーんぶ奪いに行きたいくらい好き」

「……綺梨ちゃん、ちょっと目が本気なの怖い」

「でもそれはできないから、春日井くんの最後はぜーんぶ私がもらうね」


そう言って、俺の手を取った綺梨ちゃんは、甲の部分にそっと唇を押しつける。

まるで誓いの口づけのようで、その姿に釘づけになってしまう。



「普通こういうのって男女逆じゃ……」

うっとりとした表情で、「春日井くんの顔が赤くて可愛い」なんて言われてしまい、顔を背ける。綺梨ちゃんってすぐ俺のこと可愛いとか言う。絶対感覚が変だ。


綺梨ちゃんの細い指先が、すーっと膝から太腿にかけてなぞって遊んでくる。

「……っ」

「春日井くん、やきもち焼きだね」

「……そうだよ、俺面倒でしょ」

いつか重いって言われて振られるかもしれない。そんなことを考えて、頬の熱が覚めていく。


「ううん、ぜんぶ可愛いなって思うよ」

立ち上がった綺梨ちゃんは、俺の耳元でそっと囁いた。



「これからも私の初めては、ぜんぶ春日井くんにあげるね」

「なっ、に言って」

「ほしくないの?」

「……ほしい、ほしいです。ください」

今日も完全なる彼女のペースに引き込まれる。
俺は両手で顔を覆いながら、頷いた。