「ごめんね、春日井くんのタイプ聞けばよかったね」

そしたら喜んでもらえたのにな。タイプを聞いてから、今度兄にメイクをしてもらおう。どうせなら春日井くんの好みのメイクにしたい。


「なに言ってんの」

「……なんで怒ってるの?」

「めちゃくちゃかわいいんですけど?」

「え、ごめ……いや、ありがとう」

褒められているはずなのに怒られている。なんだか理不尽だ。
不貞腐れたようにムッとした表情で、春日井くんが私に一歩詰め寄る。


「だいたい、髪の毛巻くとか、なに!? 学校中の男誘ってる?」

「春日井くん、私がいうのもなんだけど思考が極端!」

巻髪の人なんて学校にたくさんいるのに、どうしてそういう発想になるのかがわからない。兄だってこれがいいって言ってくれたのに。


「いつものナチュラルもかわいいけど、大人っぽいし、誘ってるの!? てか今日色気がやばいんだけど、なんで!」

「な、なんでと言われても、春日井くんに好きになってもらいたくて頑張ったの」

主に兄が。


「……俺もう好きなんだけど、これ以上好きにさせてどうするの心臓えぐりとりたいの?」

「それ死んじゃう」

「死にそうなくらい好きなんだけど」

「春日井くんちょっと深呼吸して、落ち着こう!」

「……無理だって」


春日井くんの頭がこてんと私の肩にのせられる。ふわふわの髪の毛を撫でながら、かわいい生き物だなぁとしみじみ思う。

どうしよう私の心臓もえぐりとられちゃうかも。


「綺梨ちゃん綺梨ちゃん」

「どうしたの?」

「……綺梨ちゃん」

名前を何度も呼ばれながら、ぎゅっと抱きしめられる。


「他の男に目移りしないで」

「春日井くんこそ」

「しないよ」