「それはどうでもいい」
「よくないよ! 理想大事だよ!」
「てかさぁ、気になるのは付き合ってもないのになんでキスしたの?」
まほこちゃんからじっとりとした目を向けられる。
「なんというか、こう……勢いで?」
「一番最悪なパターンじゃん」
「? 最悪ではなかったよ」
キスの感覚が知れたし、美味しかったし、ドキドキした。
キスってこんな感じか〜と学べたので、初々シリーズのキャラの初キスのシーンをもう一度読み返したほどだ。
「そいつのこと、好きなの?」
「好き? うーん……相手は手練れだし……」
「手練れって……つまり女遊びが激しいってことなんだよね? それやめといた方がいいと思うけど」
一見不良っぽく見えるけれど、まほこちゃんは真っ直ぐでいい加減なことが嫌いな女の子だ。
だからこそ春日井くんのようなチャラい男はあまり合わなさそう。
「学校一のプレイボーイみたいなんだよね」
「が、学校一!? はぁ……なにやってるんだか」
「私は悲観的になってないよ。むしろ相手のファーストキスの話も聞けたの。美味しかった!」
私を心配そうに見ていたまほこちゃんの瞳にすっと影が落ちる。あ、これは呆れ始めている。
「……ちゃんと言いたいこと言って、けじめつけた方がいいんじゃない?」
言いたいこと、けじめ……。
確かにまほこちゃんの言う通りだ。
あのあと私は春日井くんに対して悶々とした複雑な感情を抱いている。
本人に直接こういうことは話した方がいい。
「ありがとう。まほこちゃん! 私、言うよ!」
決意を胸に、勢いよくブランコから落ちた。