部屋に着くなり、私はロボットのような動きでベッドに座る。

まずい、自分が女の子の部屋に初めてきた男子中学生のようだ。


「そうだ。なんか飲む?」

「うん、いただこうかな」

ふたりで春日井くんの部屋を出て、リビングへ向かう。

なんだかちょっとホッとして緊張が解けていく。私が意識しすぎなのか、春日井くんは至って平然としている。

これが経験値の差だろうか。なんだか悔しい。



「綺梨ちゃん」

最近春日井くんは私のことを〝綺梨ちゃん〟と呼んでくる。まだ慣れていないけれど、彼にそう呼ばれるのは結構好きだ。



「紅茶とコーヒーどっちがいい? あ、あと日本茶もあるよ」

「日本茶で!」

「渋いね」

キッチンに立って用意をしてくれる春日井くんを見つめていると、無性に近づきたくなる。

春日井くんって学校のイメージだとキッチンに立つようには思えない。


だけど実際にこの姿を見ると、案外似合っている。ギャップというか、そういう萌え要素を感じるのだ。それにこんな姿を知っているのは学校で私しかいないはず。



「ん?」

私が見つめすぎたのか、お湯を沸かすために水をポットに入れていた春日井くんが首を傾げる。



「あ、ごめん。見惚れてた」

「なっ、え、あ……うん、そっか。……ありがとう?」