「だって相性っていうのがあるんでしょ!」

「ええ……そういう人もいるけど、俺的には互いが好きかどうかが大事だと思うけど」


顔を顰めてしまう春日井くんが、なんだかカッコよく見える。

元々整った顔立ちだけど、前に感じていたものとは異なっているのだ。これが恋愛フィルターの力だろうか。


「それなら、確かめよう?」

「う、え!? おいおいでいいじゃん!」

「相性が悪かったらどうするの」

「っ、絶対そんなことにならないって!」


断言してしまうのは、手練れだからなのか。そう思うとちょっと不満を覚える。つまり今までそういう子はいなかったと言いたいのか。



「だって、絶対大事にするし、御上さんキスだけでもドキドキしたんでしょ」

「それは、したけど……」

「それにこないだ触ったときだって……あーもーなんでこんな話廊下でしてんの!」


春日井くん、顔が真っ赤だ。かわいい。捕食したい。いや、食べられるのってこの場合私?



「春日井くんは私としたくないの?」

「……すごーくしたいけど」

「じゃあ、そのうちしようね?」

「な、……っ」

口をぱくぱくと開けながら、その場にしゃがみ込んでしまう。さすがに女子からこんな風に誘うのは嫌だったのかもしれない。

目の前にしゃがんで視線を合わせるけれど、すぐに逸らされた。



「あの、ごめんね。言い過ぎたかな」

「……がんばれ、俺」

急に自分を応援し出した。よくわからない。でも顔が赤いままなので嫌ではなさそうだ。



「とにかう先に指輪を買って男除けをしよう」

「それそんな至急必要かな」

「至急必要、絶対必要」


そう言って、春日井くんが私の手を取って歩き出す。


私たちは別れて、そして付き合ったその日に指輪を買った。




翌日、指輪を付け出した私を見た周囲は少し驚いていた。


付き合ってそこまで経っていないのに、ペアリングをつけるなんて春日井くんは重たい男だそうだ。

私には心にウブが住んでいるかわいい彼氏だけど。