教えて、春日井くん



こういう光景を目の当たりにすると、想像していたよりも打撃がくる。

自分以外の女の子が春日井くんに触れていることが不快感でしかたない。




「どーして連絡くれないの? 待ってたのに」

「いやだから、」

「今日うち誰もいないからさ、しよーよ」

甘ったるい誘いの声がして、自分には出せない類のものだな敗北感を味わう。

どうしたって私はあんな風に可愛く誘えない。口を開けば変態なことばかりだ。



『かまととぶってると、振られちゃうかもね〜』

春日井くんも変態でウブ男子好きな私に愛想をつかしてしまうかもしれない。

変態なくせに一度もそういう行為にまで及んでいないのだ。お預けを食らって嫌な思いをしているに違いない。



「てかさー、あの御上さんと付き合うとかなんのギャグ?」

「……は?」

「だってさぁ、ありえないでしょー。春日井くんのタイプじゃないじゃん。ああいう子」


タイプじゃない。
そうだったんだ。私だってそうなくせに、自分勝手に落ち込んでしまう。春日井くんのタイプは今抱きついている子のような大人っぽい女子なのだろうか。


「ね、彼女に内緒で遊ぼうよ。どうせさせてもらってないんでしょ」

「俺、浮気はしないから」

「えー、じゃあ、別れちゃえばいいじゃん。あんな真面目な子、すぐ飽きるでしょ」


今あの人を春日井くんが抱きしめ返したら、多分全部終わってしまう。


いやだ。手を伸ばさないで。

だけど、こんな醜くて身勝手な独占欲を抱いてしまうことが、まるで自分の体の中に全く別の心が入ってしまったみたいでついていけない。