「御上さ……っ!?」

最後に軽く唇を押し当ててから、ちらりと春日井くんの方を見た。


「仕返し」

笑ってみると、春日井くんの顔がみるみると赤くなっていく。
「顔が赤いよ」なんて指摘すると、恥ずかしそうに俯いてしまう。



「か、春日井くん!」

「……なに、お願い見ないで」

「お願い顔が見たい!」

「やだやだ無理、俺今情けない顔してる」

その顔が見たいのに!

私が駄々をこねても、暫く春日井くんは顔を上げてくれなかった。照れ顔をもっとみたかったのにな。

そして、チョコレート禁止令を出されてしまった。


春日井くん曰く、私がチョコレートを手にすると危険らしい。
危険なのは私でも、チョコレートでもない。春日井くんのかわいさです。



「そろそろ帰ろっか」

「そうだね」

春日井くんの言葉を合図に私たちは立ち上がって、傾いてきた日差しが降り注ぐ教室を出る。


朝起きると今日は春日井くんとどんな話をして、どんなことをしようとわくわくするけれど、夕方は気分が沈む。

夕焼けを眺めながらふたりで歩く学校の帰り道は、一日が終わる寂しさを感じてしまう。



それはきっと春日井くんと過ごす時間が終わるから名残惜しいのかもしれない。