「嫌だった?」

止めてしまったからか、不安げに聞かれた。


「緊張はしたけど、嫌じゃないよ……むしろ」

「よかった?」

「ドキドキした」

素直に答えると、春日井くんが肩を揺らして私らしいと言って笑う。

学校での一歩引いた笑顔とは違っていて、この瞬間私だけが独占している甘さを感じるような彼の笑顔。それが嬉しくなる。



「春日井くんにも、お返ししないと」

「え? あ、えっ」

春日井くんの首に腕を回して抱きつく。そして、耳元に息を吹きかけてから縁を甘噛みしてみる。


「ちょ……っ俺、耳弱いんだって……っ」

「……はぁ、春日井くんかわいい」

「な、なんで興奮してるの!?」

逃げようとする春日井くんの耳を舌先で舐めてみる。

そうすると動きが鈍くなるので、耳の奥に舌を入れてみた。すると微かに堪えるような声が聞こえてきて、私の心臓にぎゅんと妙なエンジンがかかる。

あ……耳が熱くなってきた。



「私……春日井くんのこういうの見るの好きみたい」

「へ、変態! ゃ、め……耳だけは、っ」

「……かわいい」


私の興奮がなかなか冷めず、春日井くんの耳をいじめすぎた結果、このあと春日井くんには涙目で複雑な男心をわかっていないと叱られた。


そんなに嫌ならもうしない方がいいかと聞くと、嫌なわけではないため別の機会にしてほしいと言われた。

こういうのにはタイミングがあるらしい。今はとにかく危ないからダメなんだそう。



……やっぱり男心は難解すぎる。