胸元まで伸びた艶のある黒髪は、彼女が歩くたびに天使の輪が揺れる。

目を伏せると長い睫毛が影を落とし、淡雪のような肌と儚げな雰囲気。


清楚を人の形として表すのなら、彼女のような姿をしているであろう。
誰もがそう疑わないほどの、穢れのしらない美少女。

————御上 綺梨は、高嶺の花。




どうやら私はいつのまにかこのように表現されているらしい。
常に持っている本には必ず、ブックカバーをつけているのだけれど、それすら周囲にとってはミステリアスに感じるのだそうだ。

それは好都合。誰も私に近づかず、本の中身を探ってこない。


だから今日も私は、放課後に教室の隅で読書をしながら優雅に過ごす。



……はずだった。




「御上さん、なんの本読んでるの?」

ここは私の放課後の聖域。だというのに、何故この人がいるのだろう。
脱色しているのか白っぽい髪はふわふわとしていて、甘ったるい微笑みを浮かべている春日井一樹。


彼は学年……いや、学校一のプレイボーイで女の子を取っ替え引っ替え。

遊びたければ、春日井に声をかけろ!と言われているくらい歩く危険人物。




「……私になにか用?」

小説の続きが読みたくてうずうずするので、話は手短に終わらせたい。