あの日私はいつものように兄を送り出した。

友達と隣の県まで軽く旅行に行くと言っていた。
私は兄に、お土産忘れないでね、とつけ加えて見送った。

私はまだ幼かったから、友達と旅行に行く兄が羨ましかったのを覚えている。

約束の時間になっても帰ってこないから不思議に思ったし、なぜだかとても怖かった。

兄は絶対に約束を守る人だし、門限から遅れたこともなかった。

さすがに遅いなと思った頃、電話がかかってきた。兄からではない、病院からの電話。

幼い私でも兄が出かける前とは異なる様子になってしまったことは容易に想像できた。

事実、電話に出た母が泣き崩れていたのが印象深い。

病院で見た兄は全身を殴られたような見た目をしていた。後で聞いた話によると、本当に殴られてついた傷だったらしい。

日本中で噂になっている、暴力団青竜。
その手下とも言える暴走族青竜が、兄を殺ったという。

その頃、地元を中心に青竜は謎の襲撃を行っていたそうで、兄もその被害者の一人だったらしい。

元気に家を出ていった兄が変わり果てた姿になっていたことに私は驚きを隠せなかったし、憤りを感じた。

そして私は青竜に復讐することを誓った。

幼い頃から妹の遊びに、高校生ながらも付き合ってくれた兄。私はそんな兄が大好きだったし尊敬していた。

何気なく送り出した次の日に変わり果てた姿になり、会話さえ出来なくなるとは思っていなかったからこそ、青竜に対する気持ちは大きい。

私が兄の無念を晴らす、私が兄の未来を取り戻す。