俺らが高校に入学してからというもの抗争が続いている。
恐らく青竜を潰せば、数年は落ち着いて暮らせるだろう。
まあその青竜を倒せるかどうかが一番の問題だが。
先程会議を終えた俺たちは、早速風呂に入った。
会議が長引いたせいで、風呂から出た頃には十一時をすぎていた。
華月にカフェに呼び出されていたことを思い出した俺は、部屋に戻ったあと、麗龍の屋敷へ向かった。
「ごめん、待った?」
一緒のタイミングで風呂に入ったはずなのに、華月はもう俺の事を待っていた。
「ううん、今来たとこ。」
「ん。ならいいんだけど、話って?」
話があると言われて呼び出されたけど、何の話かさっぱり分からない。
「……えっとね、一緒に寝たい。」
華月の顔が赤いのは風呂上がりだからだろうか?本当に理由はそれだけ?
「分かった、部屋に行こう。」
俺は、知っている。
毎年この時期になると華月は俺と一緒に寝たがる。理由はひとつ、怖いのだ。
八年前の今頃、華月はお母さんを亡くした。その時期が近くなると、華月はどうしてもお母さんを思い出してしまって怖くなるのだ。
華月曰く俺と一緒に寝ると悪夢を見ないらしい。だからこの時期は毎日華月と一緒に寝ている。
「…毎年ありがとう。」
いつもとは違ってやけに大人しい華月。
怖いのもあるだろうけど、恐らくこの間のの俺の言動が原因だろう。
「おう。それより華月、風呂上がりなのにパジャマじゃねぇんだな。」
華月はジャージのような部屋着を着ている。
「うん、だってパジャマとか組員には絶対見られたくないし…パジャマは部屋でしか着ないことにしてるの。」華月もどうやら乙女らしい。
「意外と可愛いとこあるんじゃん。じゃあパジャマ姿見られるのは俺の特権だな?」
なんて冗談を言ってみる。
「…うん、まあ、そうかも…」
こんなに素直に認められたら、調子が狂う。
部屋までの長い長い、恐らく二百メートル近くある廊下を歩く。
当然麗龍の奴らとすれ違うが、皆軽く会釈をしてくる。そういった動作一つ一つに、華月の統率力の凄さを感じる。