ここ数日色々あった私はかなり疲れていた。

寝ても寝ても寝た気がしない。

そんな感じだ。

ずっとふわふわと宙に浮いてるような感じ。

でもそんなことを言っていられないのは分かっている。

ーピッピッピッピッー

暗証番号が入力される音が聞こえた。零夜だ。

「おはよう。朝一で悪いけど、悪いニュースがある。」

「…おはよう。どうした?」

「火神が赤竜と手を組んで、近々仕掛けてくるだろう。」

またか。
倒しても倒しても次々に敵が現れる。
終わりが見えない、辛い。

「あぁ。ちょっと厄介だろうけど倒せるんじゃないか?何が問題なんだ?」

正直火神だけであれば、簡単に倒せるだろう。同じく赤竜だけなら、麗龍と陽影の幹部だけで倒しきれる弱さだ。

「今回、抗争の場所に指定されたのは、学校だ。」

「…嘘だろ。冗談じゃねぇ。

あそこは大して荒れてない普通の県立高校だぞ?そんなところに暴走族が関わったらどうなる?
大混乱だ。」

「…あぁ、そうなんだ。

だから問題なんだ。
下手に休校にしたら恐らくほとんどの生徒が街を出歩く。
そんなことになったら街で被害に遭う人が増える。それは避けたい。」

「……あぁ、だな。そうなると学校で仕留めることにしなきゃならないだろう。

だけど、混乱を招いたらそれこそ怪我人が出るぞ。」

「一応今考えているのは、先生にのみ情報を伝える、ということだ。

授業中に仕掛けて貰えれば、混乱を避けられる。」

「まあ混乱に関する対策は考えられるとして、一番問題なのは私達だろ?」

そうだ、一番の問題は私達だ。

暴走族・暴力団の総長だなんて知られた日には、次の日から学校で生きていけないだろう。

それに正体を明かさない方が今後の自分のためだ。

「…俺の親から校長にだけ俺らの正体を明かしてもらおう。

最悪族の奴らはバレても仕方ねぇだろう。

第一この学校に暴走族の奴らが何人かいるのは皆周知の事実だ。」

「それが一番かもしれないな。校庭で倒しきれば、恐らく族の奴らに対する批判も少なく済むだろう。
私たちは…不本意だが仮面でも被ろう。」

「…おう。じゃあ決定だな。
これから会議を開こう。

放送で麗龍の奴らを集めてくれ、俺は戻って陽影の奴らを蔵に呼んでくる。」

「…わかった。」

あぁ、なんて忙しいんだろうか。

心が休まる暇が一秒たりともない。それでも私はこの家に生まれたことを誇りに思う。

誰かのために生きられる、これは素晴らしいことだと私は思う。


『これから緊急で会議を行う。陽影と合同で行うので、十五分以内に蔵に集まれ。集合するのは族の奴らのみでいい。組員は訓練に励め、以上。』

いつものように放送を行う。この口調にはかなり抵抗があるが、舐められないためだ、仕方ない。