「……確かに、勝てない。

私は華月よりも弱い、すごくすごく弱い。

そんな私が青竜の人間を倒せるとも思ってない。」

「…なら」

「…でも、力にはなれる。幹部を倒せなくても、組員一人でも、いいから倒せるようになりたい。

そうしたら私、華月の役に立てるでしょ?」

美来は泣いていた。私は良い友達をもったな、と思う。

こんなにも愛されていただなんて知らなかった。

「…美来はずるいよ、私が断れないの知ってて、こう言ってくるんでしょ?

麗龍に入ったら、もう堂々と街を歩けなくなるし、一生極道の人間として生きることになってもいいの?

もちろん、私でも美来の命を守りきれるっていう保証はない。

お兄さんが目覚める前に、美来自身が死んでも何もおかしくない。

私がいるのは、そういう世界だよ。

人間の汚さに絶望して死にたくなったことだって何度もある。

そんな状況耐えられる?」

私だって好きでこの家に生まれたわけじゃない。人の汚さや、自分のしていることの残酷さに絶望して命を絶とうとしたことがなかった訳では無い。

それでも母と朝日さんが繋いでくれた命を、自分の力で消してしまうことはどうしてもできなかった。だから私は今日も生きている。

「…華月がいれば私は大丈夫だと思う。

それに、お兄ちゃんが殺られたあの時より最悪な環境なんてないと思う。

それにいざと言う時は華月が守ってくれるでしょ?」
美来は笑った、いつもの笑顔、私の大好きな笑顔。

「…まあそうだね。

本当は認めたくない、だから今後抗争にむやみに出す気もない。

幹部じゃなくて姫って扱いでもいいなら、麗龍に入れる。」

「…いいよ、それで十分。ありがとう。」