「…華月…、私だよ。」
聞き覚えのある声だった。誰だ?

声の主はキャップを外し、マスクをとった。

「…み、み、美来?なんでここに……」

目の前にいたのは美来だった。
驚きで足がすくむ。何で?どうして?

「……こうでもしないと会えないと思って…。」

「…なんで…。」
麗龍の屋敷で特攻服を着た私。

もう、言い逃れは出来ない。認めるしか無かった。



「…実はね、華月が麗龍の人間だって、知ってたの。
ずっと前から。

正直ね、分かってて華月に近づいた。

…幻滅したよね。もう友達だと思ってくれなくてもいいよ。」
美来は消え入りそうな声で呟いた。

「…嘘だ。じゃあ今なんでここに。」
どんなことでも動揺しない、と言える私もさすがに手の震えが止まらない。

「三年前、隣の県で起きた男子高校生暴行事件知ってる?」

「…旅行中の男子高校生二人を、暴力団青竜の組員が暴行したって事件でしょ?」

私もよく覚えている。青竜の汚さをその事件を通して改めて知ったのだから。

「…あれの被害者、今田暁人は私のお兄ちゃんなの。

ちなみに、もう一人の被害者は萩野瑞希。涼介のお兄ちゃんだよ。」

「……まさか…」

ああ、分かってしまった。あの時、涼介が陽影に入りたい、と言ったのはこのせいだったんだ。

そして、私は気づいてしまった。


きっと美来はこれから涼介と同じことを言うだろう。