「一応、お母さんとお父さんには詳しく話した方が良いと思いまして…」
健人と話をしたあと、健人のお母さんとお父さんの部屋に向かった。

「…なんのこと、ですか?」

「麗龍についてです。」

「…はぁ。」
若干困惑したような表情を浮かべる健人のお父さんだったが、もう先程までのような嫌悪感は感じられない。

「『crystal』をご存知ですか?」

「『crystal』ってあれよね?日本一の大企業って言われている!確か、家具とかを作ってる会社じゃなかったかしら?」

さすが日本一の企業とだけあって、名前は知られているようだった。

「私の父は『crystal』の会長桐ヶ谷龍之介です。ちなみに、陽影の組長月城零夜の父である月城晴風も『crystal』の副会長です。」

「…まさか…」
驚くのも無理はないだろう。
まさか日本一の大企業と言われる『crystal』と麗龍や陽影が、つまり暴力団が繋がっているなんて誰も夢にも思わない。

「父は既に一線を退きましたが、過去には総長を経験しています。

あ、そうだ、麗龍と陽影について詳しくお話しますね。」


「まず、今日本で最も勢力を持っているのは、ご存知の通り麗龍と陽影です。

この二組は正式に協定を組んでいて、私と零夜は結婚が決まっています。

麗龍と陽影の組員と族のメンバーは合わせて千二百人、特別な事情がある人以外は全員この屋敷に住んでいます。

次に幹部について説明しますね。

まず第一に覚えていただきたいのが麗龍の幹部。

総長・組長は私、桐ヶ谷華月。
副総長は桐ヶ谷真翔、私の弟です。
幹部は、青木広翔、唯我美波、伊藤健二。

陽影の組長・総長は月城零夜。
副総長は月城愛佳、零夜の従姉妹です。
幹部は、西野慎二、中野修也、七瀬守、萩野涼介です。」

「…覚えるのが大変そうですね…。
ところで今言った方々は全員高校生じゃないの?組員はみんな高校生なのかしら?」

「…いえ、今紹介したのは族のメンバーのみです。

組には二十代から四十代まで幅広い年代の人がいます。
組長補佐には後藤克彦、彼は30代です。
組の幹部に関しては後ほど説明しますが、今後関わることになると思われるのは、
紫吹琉弥、組の幹部で組員以外の統率をしています。
さっき部屋にダンボールを運んだ彼です。」


「…あぁ、あの方ね。随分としっかりした体制なのね。」

「…そうだな、全員きっちりと役職が決まっているんだな。」

「そうですね、暴力団は縦社会ですし…
まあ、暴力団というのは名ばかりですが……。」

「世の中にこんな暴力団や暴走族がいるなんて思いもしなかったよ。」

日本中の暴走族、暴力団を潰す。
もう二度と私のような思いをする人が現れないように。
私はこのために生まれてきたとさえ思っている。



「…胸を張って歩けるように、これからも頑張りますね。じゃあ私はこれから会議があるので。

それと、私の通り名は…黒蝶です。」







『あの子に…ぴったりな名前ね。』
と健人のお母さんが言っていたことは、私は知らない。