「飯田くん〜、話があるんだけど。」
私は静かに飯田くんに話しかける。

「…桐ヶ谷さん…。どうしたんですか?」
先程の柔道を見ていたせいか、かなり怯えているように見える。

みんなが出ていったのを確認したあと、私は飯田くんと話を始める。

「…今日の午後五時半。親と一緒に荷物まとめて、学校の校門前に来て。」

「…え?」
飯田くんは正直困っているように見えた。クラスメイトに突然こんなこと言われたら驚くのも当然だろう。

「飯田くん、最近お風呂入ってないんでしょ?水道止められてるんじゃないの?その様子だとご飯もろくに食べられてないでしょ。」

「…なんでそれを……。」
飯田くんは分かりやすく驚いた顔をした。

「…話を聞いてたから。まあ後は……それはどうでもいいから。」

「…それで僕をどうするつもりなの?」

「どうもこうもないよ。とにかく、家のものまとめて午後五時半に校門前ね。必ず親と来てよ。」

それだけ告げて、私は部屋を出ていく。

「…あ、あとそれから、飯田くん全然臭くないから。皆悪ふざけしてるだけだからあんまり気にしないようにね。」最後にそうつけ加えて、私は部屋を出た。