「嘘だろ、俺が負けた……!?」
零夜は信じられないといった様子で呼吸を整えている。

「だから言ったでしょ、鍛えたって。全国制覇してたとはいえ、勝ちにいくのが私のスタイルだから。

それに私も全国優勝してるの忘れないでよね、なんなら国際大会出てるからね。」

自分でも忘れかけていたけれど、そもそも私はかなり強かったかもしれない。

「絶対勝ったと思ったのに、何したんだよ。」
汗を拭きながら立ち上がってくる零夜。やっぱりかなり悔しかったらしい。

「零夜が油断したあの瞬間あったでしょ?
あそこまでは計算通りなんだよ。」

「嘘だろ。」
零夜は目を真ん丸にしている。自分が相手の考えを読めたと思っていただろうけど、実際私はそこまで計算済みだ。

「また勝負しよう。」

『おいおいお前ら、お前ら何者だ。柔道経験者か?』
先程までそっぽを向いていた先生が、私たちに話しかける。

「…あ、まあそうですね。はい。」

「一応私たち二人とも全国で優勝してますね。」

『すげぇ、月城やばくね。怖っ。』

『…え、華月、零夜くん倒したんだけど。強すぎない?敵にまさわないようにしなきゃ。』

「桐ヶ谷さん、月城のこと倒したんだけど。強ぇ、でもやっぱり可愛いよなぁ〜」

それ全部聞こえてるんですけど…。と言いたいところだけど、それは心の中に収めておこう。

そうこうしている間に授業終了のチャイムが鳴る。皆が続々と話をしながら部屋を出ていった。