バンッ───。爆発音が聞こえた。
家の門の方からだ。
食事中の和やかな雰囲気が一気に崩れた。

『ママ、パパ、どうしたの？この音何？』
華月は不安そうにマリアと龍之介に尋ねる。

『大丈夫よ、華月。ママと一緒に奥の部屋に行こうか。』
冷静なまま、マリアは華月を連れて奥の部屋へ行く。
華月が後ろを振り返ると、龍之介は部屋へやってきた組員達に的確に指示を出していた。

『ママ、怖いよ、どうしたの？』
マリアの服の裾を必死に掴みながら、華月は奥の部屋へと走る。

『ちょっとね、悪い大人がおうちに来ちゃったみたいなの。すぐにパパがやっつけてくれるから大丈夫よ。』

この時、マリアも華月も、そして龍之介、朝日さえも知らなかった。
この襲撃の本当の標的はマリアだということを。


組員達は即座に壊された門の方へ向かった。
そこには既に大勢の敵がいた。敵の数はおよそ500。


麗龍の戦力をもってすれば、倒せない敵はなかった。はずだった──。

誰もマリアが標的とは気づかないまま、戦いを始めた。

この時敵の一人、青竜の朱雨が華月達の方へ向かっているとは知らずに。


無事に奥の部屋に辿り着いた華月達は息を潜めていた。

そこにひとつの足音が響き渡る。
マリアは警戒した。そして華月の口元を抑えた。声をあげさせないようにするためだ。



「華月？マリアさん？」朝日の声だった。

「朝日くん？」マリアは声を上げる。
すると部屋のドアが開かれた。ドアの前にいたのは朝日だった。

「大丈夫ですか？今敵が攻めてきました。
この部屋でじっとしててください。いざと言う時は俺が守るんで。」

朝日はあくまで小声で話した。いつここにも敵がやってくるか分からないからだ。

「分かったわ…ありがとう、朝日くん。」

朝日はいつもの笑顔で微笑んだ。華月は今でもこの時の朝日の美しい笑顔が忘れられない。

朝日が部屋にやってきて５分ほどたったあと、部屋の扉が壊された。

敵が来た。この時マリアは死を覚悟した。そして何としてでも、華月だけは守ると誓った。

「いたいた、マリア・ハート。お前を殺しに来た。」ここへやって来たのは、青竜の幹部、朱雨だった。

「あなた………」

マリアは何かに気がついたようだった。しかしそれには気にもとめず、朱雨は近くにいた朝日を攻撃した。

この時の朝日の力は日本で三本の指に入ったはずだ。

朝日は誰にも負けたことがなかった。だから、龍之介にも期待されていたのだ。

だからマリアも大丈夫だと思っていた。

しばらくは素手での殴り合い蹴り合いが行われていた。マリアは華月を抱きしめたまま動かない。

朝日は朱雨の鳩尾に蹴りを入れた。朝日もマリアも勝負がついたと思った。

朱雨は体制を崩し、床へ倒れ込んだ。そう思った刹那、朱雨は朝日の胸元をナイフで刺した。

ずっとポケットにナイフを忍ばせていたのだ。