これは8年前のこと────。


『ママ〜、私鈴木さんのこと倒した〜!』

まだ小学生の華月は母親であるマリアに楽しそうに報告する。

この日初めて、華月は組員と戦って勝ったのだ。

『あら〜、良かったわね、華月。強くなったのね。』

マリアは華月のブロンドの髪を手櫛でとかしながら、優しく言う。

『うん、零夜と遊んでくるね、ママ!』
無邪気な華月は隠れ扉から陽影の屋敷へと向かう。

『ご飯までには帰ってきなさいよ〜。』
マリアは手を振りながら華月を見送る。

『わかった〜!』

これが、マリアと華月の最期の一日になるなんて、2人とも思いもしなかった。




『ママ〜、零夜とかくれんぼして遊んできたよ!』
華月は夕飯の時も楽しそうに今日あったことを、マリアに報告する。

『楽しそうね‪〜、ママも一緒にやりたかったわ〜。今度一緒にやろうかしら。』

『え、やってくれるの!じゃあ明日やろうよ!零夜も喜ぶよ!そういえば今日はね、朝日さんもやってくれたんだよ!』

『朝日は相変わらず優しいな、さすが次期陽影総長だ。』

華月の父龍之介は感心したように呟きながら、白米を口に運んだ。

『そうね、そろそろ陽影も世代交代かしら。朝日くんには期待してるわ。』

夕飯のハンバーグを食べながらマリアも話に花を咲かせる。