「…私ね、親に捨てられたの。気づいたらひとりぼっちだった。
食べるものも泊まるところもなくて、もう死んでしまうかと思った。
だけどその時華月のお父さんが助けてくれた。きっとあの時助けて貰えなかったら私は死んでた。
それで恩返しがしたくて、医者になった。
広翔の言う通り、私は高校には通っていない。今までずっとみんなを騙して、病院で働いてた。」
「…本当はずっと言いたかった、いつかバレてしまえば楽になれると思った。
だけど言えなかった、高校生じゃないって知られたら、皆が私から離れていっちゃうような気がして。」
美波は泣きながら答えた。美波の涙を見たのは2回目だ。
「…そんなことあるわけねぇだろ!
高校生かそうじゃないかなんてどうでもいい!
俺はそのままの美波さんが好きです!」守は幹部室に響き渡る音量で叫んだ。
あまりの直球な告白に、一気にその場の雰囲気が和らぐ。
「…そうだよ!守の言う通りだよ、愛佳は高校生でも大人でも、美波のことが好き。」
「俺も。」「俺も。」慎二も健二もそう言う。
「…美波、ありがとう。」修也はそう呟いた。
「…ん?」美波は不思議そうな顔をする。
「…皆俺の事老け顔って言うだろ?実際そうなんだよ、俺は皆と同じ16歳じゃない。28歳なんだ。」
「……はっ?」これには真翔も驚いている。
「…えっ…。」先程まで泣いていた美波も驚きを隠せていない。
「嘘だろ、修也。」
広翔も慎二も健二も顔が青くなっている。
「嘘じゃないよ、28歳なんだ。高校には通ってる。2回目だけどな。」
「…なんで?」守は驚いた顔をして尋ねる。
「なんでって言われてもな〜。言うほどの事じゃないと思ってた。ただ、おじさんが混じってるって知られたら皆悲しむと思って。」
成人しているにもかかわらず特例で族へ入ることを認めた修也。今まで隠してきたことに相当ストレスを感じていたに違いない。
「なぁ、きっと隠し事してるのは、美波と修也だけじゃない。
今みんなに打ち明けてくれよ…。これ以上仲間に隠し事するのはやめよう。」
「…まずは俺から言うな。
俺は知ってのとおり17歳。高二だ。
麗龍に入ったのは、工場を営んでいた親父が遥世に殺られたからだ。親父は三年経った今でも足が不自由なままだ。
だから、復讐するために入った。」
族に入った頃の広翔は本当に酷かった。
荒れ放題という言葉が正しいだろう。
尊敬していた父親を傷つけられたという出来事が彼の心も深く傷つけた。
尖っていた広翔は組員相手に喧嘩をふっかけて大怪我をしたこともある。今となってはその面影もないが、相当なトラウマを抱えていることに違いはない。
「…俺は、弟が殺られた。火神の奴らに襲われた。
それから弟はまた襲われる恐怖を感じて、家を出られていない。
俺が火神を殺って、弟を助ける。」
慎二は泣きながらそう言った。
慎二の過去も壮絶なものだった。
慎二こそどこにでもいる普通の高校生で毎日を楽しく過ごしていたし、それがずっと続いていくはずだった。
大好きだった弟が暴走族に襲われたその日から彼の人生は狂ってしまったのだろう。
彼は弟を殺った相手に復讐するため、家族を失ってここに来たのだ。慎二が帰る家はもうない。
「…俺は…。」健二は言葉に詰まった。
ここは、私が言ってあげるべきだろう。
「…健二はね、地域では名の知れた不良だったんだよ。当時は結構荒れてて大変だったんだよ。だけどそのままじゃもったいないと思って、私がスカウトして麗龍に入れたの。」
みんなの中では比較的恵まれた環境で過ごしてきたように見える健二だったが、幼少期から父親に暴力を振るわれ辛い人生を送ってきたと後に知った。本人の口から直接聞いたことはないけれど、こうして喧嘩を学んでいるのはお母さんのためなのではないだろうか。
「…ありがとう。なんて言ったらいいかわからなくて。」
「みんな知ってると思うけど、俺は18歳だ。そして、俺の秘密はなんだろうな……。あるとするなら、俺には兄がいた。8年前に死んだけどな。」
零夜の兄、朝日さんについてはよく知っている。小さい頃よく遊んでくれた、誰よりも優しい人だ。
あの日も、私たちのために戦ってくれた。もう一度、朝日さんに会いたい。
「…私は朝日さんのことが大好きだった。お兄ちゃんみたいだった。
従姉妹の私を実の妹みたいに接してくれた。だから朝日さんが殺されたのが許せなかった。だから、陽影に入った。青竜に復讐するために。」
愛佳と朝日さんは本当に仲が良かった。愛佳は朝日さんに懐きっぱなしだったし、朝日さんも喜んでそれに応えていたのを覚えている。
私はみんなが愛する朝日さんを、多くの人から奪ってしまった。
朝日さんを殺したのは…私だ。
食べるものも泊まるところもなくて、もう死んでしまうかと思った。
だけどその時華月のお父さんが助けてくれた。きっとあの時助けて貰えなかったら私は死んでた。
それで恩返しがしたくて、医者になった。
広翔の言う通り、私は高校には通っていない。今までずっとみんなを騙して、病院で働いてた。」
「…本当はずっと言いたかった、いつかバレてしまえば楽になれると思った。
だけど言えなかった、高校生じゃないって知られたら、皆が私から離れていっちゃうような気がして。」
美波は泣きながら答えた。美波の涙を見たのは2回目だ。
「…そんなことあるわけねぇだろ!
高校生かそうじゃないかなんてどうでもいい!
俺はそのままの美波さんが好きです!」守は幹部室に響き渡る音量で叫んだ。
あまりの直球な告白に、一気にその場の雰囲気が和らぐ。
「…そうだよ!守の言う通りだよ、愛佳は高校生でも大人でも、美波のことが好き。」
「俺も。」「俺も。」慎二も健二もそう言う。
「…美波、ありがとう。」修也はそう呟いた。
「…ん?」美波は不思議そうな顔をする。
「…皆俺の事老け顔って言うだろ?実際そうなんだよ、俺は皆と同じ16歳じゃない。28歳なんだ。」
「……はっ?」これには真翔も驚いている。
「…えっ…。」先程まで泣いていた美波も驚きを隠せていない。
「嘘だろ、修也。」
広翔も慎二も健二も顔が青くなっている。
「嘘じゃないよ、28歳なんだ。高校には通ってる。2回目だけどな。」
「…なんで?」守は驚いた顔をして尋ねる。
「なんでって言われてもな〜。言うほどの事じゃないと思ってた。ただ、おじさんが混じってるって知られたら皆悲しむと思って。」
成人しているにもかかわらず特例で族へ入ることを認めた修也。今まで隠してきたことに相当ストレスを感じていたに違いない。
「なぁ、きっと隠し事してるのは、美波と修也だけじゃない。
今みんなに打ち明けてくれよ…。これ以上仲間に隠し事するのはやめよう。」
「…まずは俺から言うな。
俺は知ってのとおり17歳。高二だ。
麗龍に入ったのは、工場を営んでいた親父が遥世に殺られたからだ。親父は三年経った今でも足が不自由なままだ。
だから、復讐するために入った。」
族に入った頃の広翔は本当に酷かった。
荒れ放題という言葉が正しいだろう。
尊敬していた父親を傷つけられたという出来事が彼の心も深く傷つけた。
尖っていた広翔は組員相手に喧嘩をふっかけて大怪我をしたこともある。今となってはその面影もないが、相当なトラウマを抱えていることに違いはない。
「…俺は、弟が殺られた。火神の奴らに襲われた。
それから弟はまた襲われる恐怖を感じて、家を出られていない。
俺が火神を殺って、弟を助ける。」
慎二は泣きながらそう言った。
慎二の過去も壮絶なものだった。
慎二こそどこにでもいる普通の高校生で毎日を楽しく過ごしていたし、それがずっと続いていくはずだった。
大好きだった弟が暴走族に襲われたその日から彼の人生は狂ってしまったのだろう。
彼は弟を殺った相手に復讐するため、家族を失ってここに来たのだ。慎二が帰る家はもうない。
「…俺は…。」健二は言葉に詰まった。
ここは、私が言ってあげるべきだろう。
「…健二はね、地域では名の知れた不良だったんだよ。当時は結構荒れてて大変だったんだよ。だけどそのままじゃもったいないと思って、私がスカウトして麗龍に入れたの。」
みんなの中では比較的恵まれた環境で過ごしてきたように見える健二だったが、幼少期から父親に暴力を振るわれ辛い人生を送ってきたと後に知った。本人の口から直接聞いたことはないけれど、こうして喧嘩を学んでいるのはお母さんのためなのではないだろうか。
「…ありがとう。なんて言ったらいいかわからなくて。」
「みんな知ってると思うけど、俺は18歳だ。そして、俺の秘密はなんだろうな……。あるとするなら、俺には兄がいた。8年前に死んだけどな。」
零夜の兄、朝日さんについてはよく知っている。小さい頃よく遊んでくれた、誰よりも優しい人だ。
あの日も、私たちのために戦ってくれた。もう一度、朝日さんに会いたい。
「…私は朝日さんのことが大好きだった。お兄ちゃんみたいだった。
従姉妹の私を実の妹みたいに接してくれた。だから朝日さんが殺されたのが許せなかった。だから、陽影に入った。青竜に復讐するために。」
愛佳と朝日さんは本当に仲が良かった。愛佳は朝日さんに懐きっぱなしだったし、朝日さんも喜んでそれに応えていたのを覚えている。
私はみんなが愛する朝日さんを、多くの人から奪ってしまった。
朝日さんを殺したのは…私だ。



