闇の夜に咲く、一輪の華

華月達が公園に着いた時、既に氷神は到着していた。

麗龍と陽影は早速陣形を組み、戦いを始める。

あたりには骨の折れる音や、血が飛び散る音、殴られる音が響きわたる。

華月も正直この場に慣れているわけではなかった。

やはり何回戦っても怖いものは怖いらしい。

耳を塞ぎたい、逃げたい、でも戦うしかないと、華月は思う。

最前線の真翔や愛佳が着実に相手の人数を減らしていく。

普段は頼りない真翔だが、誰よりも人のためを思って行動出来る人でもある。

そして健二と慎二は相手を確実に仕留め、縄で縛っていく。

2人の素早い動作には麗龍や陽影の組員も息を飲んだ。

美貌を利用して敵の戦闘力を弱めた美波も注射器を使って敵に薬を打ち込んでいく。

その様子にはまだ誰も気づかない。

その一方で木の上に辿り着いた零夜も暗闇の中敵味方を判別しつつ、銃で麻酔を打ち込んでいく。

突然眠り出す味方を見て、氷神もかなり焦っているようではあった。しかし相手も調子を崩さず戦い続ける。

その頃、敵の組長神宮寺、通称遥光は着実に華月、黒蝶の元へ向かってきていた。



「来る。」黒蝶は絶対的な勘でそう呟く。

「え……あ…。」初めての抗争に緊張している涼介は顔を真っ青にしている。

「俺が守る。そう言っただろ?」
このような時でも黒蝶は総長としての余裕を見せる。その強さに何人が救われただろう。

「麗龍総長、黒蝶。戦いに来たぜ?」
遥光は舌で口の周りを舐め回しながら言う。
遥光からは多少の狂気を感じられた。

「やっと来たか、遅せぇよ、遥光。」
黒蝶は戦闘モードに入った。こうなったらもう誰も止められない。
彼女は自分のもつ力の全てを組長、遥光にぶつける。

黒蝶の一声で戦闘は始まった。

あまりの凄さに涼介は息を飲む。俺がいたら死ぬ、きっと彼はそう思っただろう。

2人の間に誰かが入る隙などなかった。
涼介は静かに2人から一歩離れた。

大きく振りかぶった黒蝶の拳は遥光の口元に当たった。

遥光は血を吐く。女性であることを感じさせないほど黒蝶の拳は強かった。

大きく振りかぶった反動で体制を立て直すのに時間がかかっていた黒蝶の肋に遥光の大きな拳が食い込む。

「ぐはっ…」そこに来るとは思っていなかったのだろう。
黒蝶は明らかに動揺していた。

いくら鍛えていても肋周辺にさほど筋肉はつかない。恐らく今の一撃で黒蝶の肋骨は一本折れただろう。

「うりゃあ!」一気に体制を立て直し、黒蝶は得意の回し蹴りで遥光の頭を蹴り飛ばす。

これには遥光も怯んだようで、地面に叩き付けられる。

ここぞとばかりに黒蝶は右足で遥光の鳩尾を蹴り潰す。

「……っは!」遥光は悲鳴を上げる。殺った。

黒蝶はそう思った。だがしかしその瞬間、足を掴まれる。

「何っ!?」突然のことに対応することが出来ず黒蝶は転んでしまう。

しまった。黒蝶はそう思った。殺られる。

予想した通り、遥光は黒蝶の上に覆いかぶさってきた。

殴られる。そう黒蝶は覚悟した。
そして目をつぶり次の一撃が来ると覚悟した。

しかし飛んでたのは遥光の頭だった。

涼介が一発後ろから攻撃したのだった。遥光は気絶している。その隙に涼介は遥光を縛り付けた。

「助かった。ありがとうな、涼介。」

「それより大丈夫か?骨、折れてねぇ?」
華月は手をつきながら立ち上がった。

「いや、多分一本折れてる。肋だな。まあ大丈夫だろ。何とかなる。」

その頃前線では、ほとんどの敵が眠りにつき、麗龍に縛り付けられていた。

恐らくそろそろ警察もやってくるだろう。
華月と涼介も皆がいる方に向かう。

華月が最前線に着いた時には、残り数人を残してほぼ全ての敵は木に縛り付けられていた。

「真翔。」零夜が木の上から叫ぶ。
華月からは真翔が頷いたように見えた。

次の瞬間、真翔は残り全ての敵を蹴りで倒したのだ。


「勝った。」静かに真翔は呟いた。
その声は夜の公園中に風を通して伝わった。

遠くからはサイレンの音が聞こえる。警察が来るのも時間の問題だろう。

「長居する必要はねぇ。とっとと帰るぞ。準備ができたやつから帰れ。

怪我の手当は修也と広翔に任せてある。怪我をしたやつはそこへ行け。帰るぞ!」

華月の合図で皆はバイクに乗り込んでいく。