「始め!」
零夜の声でスタートした。


遅い、スピードがとにかく遅い。それに隙がありすぎる。

こんなレベルでは、あっという間に敵に1発当てられて終わりだ、気絶して殺される。

「さすが総長だけあって強ぇな。」
私の攻撃をかわしながら彼は言う。

確かに彼は隙まみれだ、恐らく拳も弱い。
でも、私の攻撃をかわす力はある。

「 当たり前だ。日本一の総長舐めるな。」

「日本一?なら尚更入りたくなるな。」

萩野くんは、さらにスイッチが入ったかのように見える。目が違う、これは見込みがあるかもしれない。

「うりゃあ!」

萩野くんの拳は油断していた私の肩に、確かに当たった。

「ふぅ、はぁはぁはぁ…」萩野くんの息遣いが屋上に響きわたる。

「なかなかやるじゃねぇか。
俺は認める。まあカスみたいなパンチだな。
ただ、どれだけ精神がボロボロになろうとも、俺は責任を取らない。
それでもいいなら陽影に入れ。どうだ零夜。」


一瞬考えた零夜は、ようやく口を開いた。

「仕方ねぇ。俺も認める。
ただ入るなら族の規則に全て従ってもらう。
それに家もこっちで指定する。入るって言ったんだから、簡単にはやめさせねぇ、いいや、骨を埋めることになってもいいんだな?
もうこの世界で死ぬと覚悟しろ。」


「分かった。お前らに協力できるように頑張る。」

「その域だ。ただ俺たちのことは『お前』ではなく華月と零夜と呼べ。」


「華月こいつの処遇は?」
教室に戻りながら零夜は後ろにいる私に問う。

「この実力なら幹部でいいだろう。後で健二に鍛えてもらおう。」

「早速4時までに荷物をまとめて、もう一度学校に来い。そしたら家に案内する。」

私はそれだけ言い残して教室に戻った。

「分かった。」