闇の夜に咲く、一輪の華

息を潜めた黒蝶はついに敵のいる場所へたどり着いた。

「やぁ、お前ら俺を待ってたんだろ?」
珍しく好戦的な黒蝶。
格下相手の喧嘩に十分な余裕が感じられる。

「やけに調子に乗ってやがるな?いいのか?沖縄一にやられても。」
敵はおそらく麗龍や陽影を知らない。
全くもって怯える様子もない。

「…笑わせるな、たかが沖縄一がいきがるな。」

「…随分と煽るじゃねぇか、じゃあお前らの族の名前を教えろよ?」


「…まあ俺たちが堅気じゃねぇってわかっただけ褒めてやるよ、あとは俺たちに挑む勇気もな」
黒蝶は制服のシャツの袖を捲りきった。
準備は整った。

「もったいぶってないでさっさと名乗ったらどうだ?」
美しすぎる総長を前に敵の総長は完全に鼻の下を伸ばしていた。
黒蝶に勝ったあとのことを想像して、下品な妄想を膨らませているに違いないが、そんな瞬間は永遠に訪れない。


「麗龍総長、桐ヶ谷華月だ。挑んだ相手が悪かったな?知らねぇとは言わせない。」
冷えきった目で敵を見つめる黒蝶、クラスメイトを怯えさせたことにかなり憤っているようだ。

「…麗龍?…まさか、全国一の……いや、そんなはずない!」

黒蝶は閉めていた制服のボタンを開け、胸元を総長へ見せた。

「知らないわけねぇよな?これが見えるか?蝶だ、お前も知ってるよな?麗龍の噂。」

「総長と幹部は胸元に入れるって…本当だったのか…」

「いくら位置が離れてるから無知だったとはいえ挑んだ相手が悪すぎた。お前は今日で終わりだ。ここには陽影の総長月城零夜もいる。」

「…そんな、許してくれ……知らなかった、全国一だなんて…」

完全に脅えきっている。先程までの威勢はない。もう完全に立ちはだかる恐怖にひれ伏すことしかできないようだ。

「…許すわけねぇだろ、せいぜい留置所で大人しくしておくことだな。」

黒蝶は総長の腹を一蹴りした。

「…がはっ…」血を吐いた、内臓が破裂しかねない強さだった。

「この後は麗龍がしっかりお前の族の奴ら全員捕まえて警察送りにするから安心しろ、よくも俺たちの修学旅行潰したな?」

倒れ込んでいる総長の顔に一発殴りを入れた。血が吹き出す、完全に黒蝶の強さに圧倒されている。反撃の隙もない。

「…許し…がっ……!」

さらに胸に一撃を喰らわせた、もう敵の意識はない。

長居は無用だ、判断した黒蝶は手に着いた血を敵の服で拭い、制服のボタンを閉めると、総長の服のポケットからキーを奪い、みんなの元へ帰った。